栄養学よりも、気持ちを
高められる食事が大事。
僕の場合は焼肉なんです。
サッカー解説者
松木安太郎さん
まつき・やすたろう 1957年東京生まれ。小学校4年で読売クラブ(現東京ヴェルディ1969)入部。16歳で同クラブトップチームに昇格。日本リーグ優勝3回、天皇杯優勝3回。日本代表としても活躍し90年引退。93年「ヴェルディ川崎」監督に就任し、2年連続Jリーグ優勝。現在、サッカー指導・解説、講演に活躍。

あけましておめでとうございます。
2006年新春号のゲストは、サッカー解説者の松木安太郎さんです。
6月開催のビッグイベント、サッカー・ワールドカップの見どころや、日本代表チームへの期待を聞きました。
また、果敢なプレーで「火の玉小僧」と称された現役時代の思い出や、サッカーへの変わらぬ情熱、さらに年季の入った焼肉ファンぶりについても、熱く語っていただきました!
W 杯、まず初戦で1勝を
――サッカーW杯、1次リーグの組み合わせが決まりました。日本はF組、最強軍団ブラジルとも対戦しますね。
松木 ええ、でも強いところが1チームある組のほうが、混戦になる可能性が少ないので戦いやすいと思いますよ。
ブラジルの決勝トーナメント進出は確実。残り1席を日本、クロアチア、オーストラリアで争う展開になるはずですが、この場合、日本はまず初戦で1勝したい。
すると以後の戦いが楽になるんですよ。過去のW杯、みんなそうですから。
――日本の初戦はオーストラリアですね。どんなチームなんですか。
松木 国としては32年ぶりのW杯出場ですが、オーストラリアのサッカー選手は昔からヨーロッパで活躍しているんですよ。今回も主力はほとんど海外で活躍している選手なんです。
――では実力充分ですね。それに監督は前回W杯で韓国を4位に導いたヒディンク監督。手ごわいのでは?
松木 そうですね。ヒディンクは戦術だけじゃなくて、選手の掌握、人間扱いの巧い監督だと思いますよ。
ただ、母国のオランダリーグの監督も並行してやってるんです。そんな事情を見ると、オーストラリアはW杯復帰を賭けてヒディンクを呼んだのであって、それが果たせれば上々、すでに一区切りついたという感じじゃないかなと(笑)。
W杯を機会に「こんなにいいプレーヤーがいるぞ」と世界にアピールしたい国は多いと思います。オーストラリアもその一つでしょうね。
――勝ち目はありそうですね。
松木 それに日本対ブラジル戦が1次リーグ最終戦という日程も有利です。ブラジルがそれまでに1次リーグ突破を決めていれば、それほどガンガンこないでしょう。引き分けもあり得ますよ。 ブラジルと日本が一緒に1次リーグを突破したら盛り上がると思うんです。ブラジルには日系人が多いし、在日ブラジル人も多いから親近感があるでしょう。 国境を越えて一緒に応援できるのもW杯の楽しみの一つですからね。
――日本代表のココがすごい、というポイントはありますか。
松木 日本代表はW杯では「しっかり守って、速攻(カウンター)!」という展開になると思いますので、そこをご覧になってほしいですね。 決して消極的な守りではなく積極的な守り。次の攻撃に移るためのディフェンシティブな闘いを観ていただきたいです。 ゴールキーパー・川口能活を中心に、中田英寿選手、中村俊輔ら攻撃陣の選手がバランスよく試合に入ってくれれば、予選突破、充分あると思いますよ。
――前回は韓国チームの闘志みなぎるプレーにしびれました。今回も強いですか。
松木 韓国は1次リーグ、フランス・スイス・トーゴと対戦するG組。この組で勝ち上がるのは韓国とフランスじゃないかと見ています。前回同様、アジア魂で上位を狙ってほしいですよね。
前大会では日韓両国のサッカーファンが互いの代表チームを応援したりして、連帯感が生まれたでしょう。今回も、いい意味でのライバル意識で刺激し合いながら、一緒に上に行けるといいですね。
逆境の中にいたから
強くなれた
――松木さんは「東京ヴェルデイ1969」の前身、「読売クラブ」のご出身ですね。
松木 そうです。小学校で「読売クラブ」のサッカースクールに通い始めて、16歳でトップチームに昇格して、引退後はコーチ、「ヴェルディ川崎」の初代監督も務めましたから、ひと筋です。
当時、日本にはサッカーのプロリーグがなくて、学校か企業のクラブ活動しかなかったんです。
そんなアマチュアリズム至上主義の中で、「読売クラブ」はプロサッカーの実現を掲げて1969年に発足したんですから異色でしたよ。
だから最初はすごく風当たりが強かったんです。「読売クラブ?どこの馬の骨だ?」という感じ(笑)。
でも、逆境の中にいたからこそ「結果を出さなければ認められないんだ」というハングリー精神が養われましたね。
それに、あの時代に海外からコーチや選手を呼んで、世界の情報やテクニックを学べたんですから恵まれていました。
――16歳でトップチームの一員になったということは天才型プレーヤーですか。
松木 いや、僕は身体も小さいし、両親がスポーツ選手なわけでもない。マイナスから出発して、コンプレックスを抱えながら経験を積んで、何とか格好のつく選手になったというタイプです。
ですから一日でも練習を休むと情緒不安定になりましたよ。いつもサッカーのことを考えてないと不安だったんです。
16歳でトップチームに入れてもらってからずっと「来年は契約してもらえないかも知れない」と思いながら生きてきましたからね。
「お前、もう要らない」と言われたくないから、がむしゃらにやる。それが何十年も続きました。
それは今も変わってないんですよね。監督やって辞任して、復帰してまた辞任して……と1年ごとのスタンスで、すごく大胆な生き方をしておりまして(笑)。
厳しいですけれど、僕みたいなマイナスだらけの男にプラス思考を与えてくれたのがサッカー。競技テクニックだけではなく、人間としての勉強もさせてもらいました。そのサッカーにずっと関わっていられるのは幸せです。
――選手時代、指導者時代を通して、最も印象的な試合を挙げてください。
松木 忘れられないのはJリーグ元年(1993年)に「ヴェルディ川崎」の監督として優勝を決めた試合です。
今も現役で頑張ってるカズ(三浦知良)をはじめ、いい選手に恵まれて、みんな同じ方向を向いて頑張ってた。素晴らしいチームでした。
当時は35歳、Jリーグ最年少監督でした。今、あの歳で、あの状況で「監督やれ」って言われたら断ります(笑)。
若かったからこそ引き受けられたといいますか、「失敗したらこの世界にいられない」なんてところまで考えない。そこが僕のバカさ加減なんですけど(笑)。
けれども、あの時、勝つか負けるかで、その後の人生は全然、違ったと思います。日が経てば経つほど大事なゲームだったんだと実感が増してきますね。
――現在はシャープで軽快な解説者としてご多忙ですね。
松木 解説をする時は、派手じゃないけど欠かせない選手とか、チームに貢献するプレーのできる選手へのコメントを出したいと思っているんです。
というのは、僕自身がレベルの高い選手じゃなくて、精一杯やって何とか格好がついたという選手でしたから。
同じタイプの選手たちの評価や地位が向上する手助けができればと思いながら解説していますね。
松木流・豚足焼肉とは?
――大の焼肉好きだそうですね。
松木 最初の焼肉はね、いつごろか覚えてないんですけど、父親がどこかで朝鮮料理を覚えてきて、肉をタレに漬けて、ニンニクも入れて、それを焼いてくれたんです。これがうまくてね!
しばらくして「じつは小岩というところに焼肉屋があるんだ」と言って、僕と母親を連れていってくれました。
ちっぽけな店だったんですけど、うまくて、うまくて。以来、とにかく焼肉でご飯を食べるのが最高の好物。
現役時代だって、合宿の始まりも打ち上げも焼肉屋。サッカー選手が集まったら「何食う?」「焼肉!」でしたよ。
今も毎年、86年W杯予選OB会というのをやってますが、焼肉屋で集合してさんざん食べて飲んで騒いで、また焼肉屋で締めるときもありますからね(笑)。
クラブチームでも焼肉、日本代表チームでも焼肉、OBになっても焼肉。ずっと焼肉と人生が切り離せないんです。
――やはり元気が出ますか。
松木 出ますね!焼肉、キムチ、ニンニクは。仕事柄、栄養学も勉強しますが、理論よりも「コレを食べると元気になる」とか「疲れた時はコレだ」という、気持ちを高められる食事のほうが大事ですよ。僕の場合はそれが焼肉とホルモン系なんです。
それから僕は豚足を焼きますね。蒸したのか茹でたのか、ありますよね、あれをむしって焼く。あ、真似するなら身の側から焼いてくださいね(笑)。
これにニンニクなんかまぶして食べる。コラーゲンたっぷりでうまい!お肉よりも先に「豚足、二人前」なんて言う、お店の人に嫌がられそうなんですよ(笑)。
――ごひいきのお店はありますか。
松木 自宅の近くなら『おにぎりミドリ』という、おにぎり屋さんなのに焼肉をやっている店(笑)。朝の4時までやってて、おにぎりも出してくれて、カラオケが歌えるんですが、そこのロースとかミノが何とも言えない。
群馬に行ったら高崎市の『ホドリ』、神奈川に行ったら橋本市なら『ハナセン』。あちこちに好きな店があるんですけど、あまり高級店はないですね(笑)。
――これからも焼肉ファンでいてください。W杯での解説を楽しみにしています。
cap
「前回W杯では韓国と日本、両国が盛り上がりました。今回も、ブラジルや韓国との親近感が増すような展開になれば」と松木さん。
取材協力/ロイヤルパークホテル
東京都中央区日本橋 Tel 03-3667-1111
コーチングBOOKサッカー
強いチームをつくる
成美堂出版 1,050円
サッカー関連の著作は多数。最新刊はジュニア世代を指導する人に向けた指導書。連続写真を中心に解説したテクニックのポイントと、指導者のための指導ポイントの2つを紹介している。
「現役時代はサッカー選手が集まったら『焼肉!』でしたよ。いまだにOB会でも焼肉。過去からずっと焼肉と僕の人生は切り離せないんです」
--全文の詳細は「月刊やきにく」をご購読下さい--
|