いつかは財布を気にせず、焼肉を食べられるようになりたいなぁって思ったものです。
真父親である故・三平師匠ゆずりの明るいキャラクターで、舞台やテレビに大活躍の林家こぶ平さん。
古典落語にも磨きをかけ、平成17年春には、九代目林家正蔵の襲名も控え、準備に追われる毎日。
大勢の人たちに囲まれて育った少年時代、偉大な父の影で味わったプレッシャーとの葛藤、そして大好きな焼肉について、話をうかがいました。
みんなで食べる晩ごはん
多いときには50人も
――大スターのお父様(故・林家三平さん)のもと、どのような少年時代を過ごされたのですか?
こぶ平 父がよく言っていた言葉に「明るく元気に一生懸命」っていうのがあるんです。
不器用でもいい、下手でもいいから頑張ればいい。うまくまとめるとか、要領よくこなすより、明るく前向きに、胸を張って生きていけばいいよ、ということなんですが、これが我が家のモットー、林家一門の家訓になってるんです。
だからご存知のように、とにかく明るい。クヨクヨしない。嫌なことはすぐ忘れる。溜めると嫌なことは倍増しちゃいますからね(笑)。
――中略。――
――食べることが、林家一門のパワーの源なんですね
こぶ平 そうなんです。ですから今でも時間が許す限り、僕も皆と一緒に食卓を囲むようにしています。そうするといろんなことが見えてくるんです。
普段よく食べるお弟子さんが、食がすすまないようだと、どうしたんだい?と聞いてやります。すると「実は○○師匠からお小言を頂戴しまして……」
逆に、ウチの子供が妙に食べっぷりがいいと「今日は学校でなんかいいことがあったんだなぁ」ってね。
こんな風に、食事を通して、普段の生活、健康状態もわかってくるんですね。
皆で囲む食卓、明るく楽しく食べる晩ごはんていうのは、親父の代からそうなんですが、僕にとってもすごく大事なことなんです。
修業時代は焼肉店のメニューに
憧れを抱いていたんです
――食べることがお好きですから、焼肉も大好きですよね。
こぶ平 もちろんです! 実は昨日の夜も焼肉を食べたんです。
噺家はおなかから声を出すので、体力をすごく使うんです。だからみんなよく食べますね。特に若いお弟子さんたちにとっては焼肉はご馳走。でも金がない(笑)。
僕が焼肉屋さんで焼肉を食べたのは、この世界に入ってから。昔は東京の下町では焼肉はあまり食べなかったんです。食べても豚肉。牛肉はとても高価なものというイメージがありましたね。
ですから初めて焼肉屋さんへ行ったとき、煙がモウモウとあがっていて、ちょっと格好いいお兄さんたちが焼肉にかぶりついているのを見て、何か「大人の世界」だなぁと、思わせるものがありましたね。
僕が前座のころのギャラは300円。
二つ目で1000円。師匠からお小遣いをいただいて仲間と焼肉屋さんへ行っても、おなかいっぱい食べられないんです。
カルビは特選・特上・上・並とあったら、もちろん並。ビールも飲みたいときは、カルビをあきらめて、ホルモンに。焼肉店のメニューに憧れを感じていた時代でしたね(笑)。
時々売れっ子の師匠に焼肉屋さんへ連れて行っていただくと、特選カルビをいただける。うまかったですね、あの味は忘れられません。
いつかは財布を気にせず、焼肉を食べられるようになりたいなぁって思ったものです。
――お気に入りのお店はありますか?
こぶ平 「新宿末広亭」「上野鈴本」「浅草演芸ホール」など、それぞれの仕事場の近くに、なじみの焼肉店がありますね。
よく打ち上げと称して、お弟子さんたちを連れて行きます。若い連中はほんとによく食べますね。
――こぶ平さん流こだわりの焼肉スタイルは?
こぶ平 ロースやカルビの焼肉も大好きなんですが、僕はスープが欠かせません。テグタン、コムタン、もやし、ワカメなどのスープ類は必ず注文します。
このスープをごはんにかけて食べるのが最高にうまい!からだの芯までエネルギーが伝わるような気がして。
そしてこのエネルギーが、また次の日の僕の活力の素になるんです。
――これからも、焼肉パワーで楽しい話芸を見せてください。
今日はありがとうございました。
林家こぶ平(はやしや こぶへい)
本名・海老名泰孝。昭和37年、故・林家三平の長男として東京に生まれる。昭和52年林家三平に入門。三平死後は林家こん平門下に。昭和63年24歳の史上最年少で真打に昇進。祖父の七代目正蔵、父の三平に続き、親子三代の真打は落語界初。新作はもちろん古典落語にも若さや現代感覚を盛り込み、楽しい高座を繰り広げるほか、多数のテレビ番組に出演。ほかにジャズ評論、テレビ時評など執筆の分野でも活躍。主な著書に『感性のスルメ』(リクルート出版)、『お江戸週末散歩』(角川書店)など。
平成17年春に、九代目林家正蔵を襲名予定。
林家こぶ平著 『お江戸週末散歩』
(角川書店 角川oneテーマ21) 705円(税別)
生粋の江戸っ子落語家が贈る、気ままな江戸時代へのタイムスリップの楽しみ。
これを読むと、古典落語がさらにおもしろくなる。
--全文の詳細は「月刊やきにく」をご購読下さい--
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