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焼肉店を開店させる

 ある方から「焼肉店を新しく始めようと思いますが、どういった点に注意したらいいでしょうか」と訊ねられました。
 現状を分析すれば、次の3点が考えられます。

@ 既存店のあまりにも低いQSC(注)と、それに対するお客様の不満を見て、大手はここぞとばかりにチェーン店を進出、いま大進撃の真っ最中である。しかし、数年で飽和状態になるだろう。
A 1時間前後でお客様に3000円ほど使っていただける焼肉を主力とした専門業種・業態店は、仕込みなどの難易度から与し易い仕事だと思われている。
B インターネットなどの情報過多の現在、生活防衛意識もあるお客様は、味については私たちよりも「プロ」である。

 ということだと思います。
 厳しい状況下で出店をされる上で、次のような点を心に留めておいてもらえたら幸いです。

@ 「温故知新」「不易流行」。変わるものもあれば変わらないものもある。古いなかにも本物はあり、本物は必ず残る。存続するには「本物とは何か」を追求しつづけること。焼肉料理もより専門的に、そして本物を追求する時代になってきた。それは時流だけではない。
A 韓国料理の核(もむ料理など)を理解すること。そして、肉を切る作業とは包丁をどれだけ持つかにある。
 年季がコクをつくるのであって、秘伝というものはない。
B 地域特性と客層の特定、そしてその路線に合わせたコンセプト(経営政策)で、既存店との差別化、隙間を埋める特異性があれば出店すべし。
 建坪最低30坪以上。
C 自分の限界を知り、出店マーケッ卜を調べつくせ。そして自信のある商品を売れ。それを成功するまでつづけよ。
 戦いはトップの差で決まる。競合店のトップに負けないものを持つ気概を!
D 商いは時間をかけて伸びるもの。急成長・スピード違反はいつか必ずしっぺ返しをくう。 
 心構えをしっかりと持ち、余裕のある運転資金を準備してじっくりと攻撃することだ。
E 「不安の時代」「癒しの時代」といわれているいま、「泥臭さ」「土臭さ」[カジュアル」「東南アジア風」など、癒しのコンセプトを店内に取り入れてみては?  
 アルファ波を発する「緑」やガーデニング、水の流れなどをつくるとか、照明は角のないものにするとか、優しさと温かさがある「大地の色」を配色してみてもいいかも知れない。
F すでに業態の垣根を超える「フュージョン(融合)化現象」が始まっている。自店の個性を打ち出さなければ生き残りは不可能。いかにオリジナルを作り出すかを心がけるべし。
「焼肉」という看板を目立たせ、あくまで4000?1万円でおつりがくるような、敷居が高くなく明るくて軽い、そんな自然体の専門店がいいのではと思っている。

(注)QSCとは、「クオリティ(Q)」「サービス(S)」「クレリネンス(C:清潔な店舗)」のことで、飲食店がお客様のためにまず考えなくてはいけないこと。


低迷する2号店を建て直せ!

 ある方から「好調な本店同様の店構え・メニユーで出店した2号店が芳しくない」という話を聞きました。
 商いは簡単ではありません。しかし、謙虚に続ければ好調は戻ると思います。参考までに、私の考えを記してみましょう。

@ お客様はマルチメディア(マス)の情報で、貴重なお金を使っての体験をし過ぎている。今や「一人十色」の時代。TV番組ではなく口コミを信頼している現在、2号店からは当然変化があってしかるべき。
A 大衆は縮んでいる。10年前に比べても、全国どの町でもショッピングセンターは3倍に増え、さらにクラスター(複数の店舗・集台体を関連づけて配置したもの)も数多くできた。まだまだ楽しい選択ができる超大型エンターテイメントができるだろう。
 これからは、各部屋の内装が違い、和洋とりどりの複合化、歩いて5分以内で、顧客の別宅であり、特別な居間であり、納得価格でゆったりと団欒ができる、そういうお店こそが、21世紀にあるべき飲食店の役割ではないだろうか。
B 安くて高級感があるお店。外食はあくまで「ハレ」の場、レジャーの範疇、アミューズメント的な要素が必要。
 お客様は楽しんでいますか?  
 笑顔で食事をしていますか? 
 笑顔の出せるアトモスフェア(雰囲気)、ホスピタリティ(接客)の工夫はありますか?
C 将来、ディスクロージャー(情報公開)してお客様も原価を知って来店するようになるので、接客の好きな従業員がいるかどうかがポイントになるのでは?
D 飲食店は隣人に支持されることから始まる。地域に存在価値があるお店となるために、その場所になくてはならないものを探し求めることが大切。
「○○まつり」など地域文化を生かした楽しい試みで、祭り気分を店内に。
E 売り上げはその属する市場の大きさとシェアによって決まる。自社の適正を知り、差別化によって耐え抜いて、そして勝ち取るのだ。
 どこにでもあるメニューではなく、独自のメニューで差別化を。
 たとえばナイトレジャー街であれば一品料理(極論を言えばレバー・さしみ専門店など)も考慮に入れてみては。
 ネーミングも「元気カルビ」「熟成サガリ」「パワーカルビ」などオリジナリティを考えてみよう。
F 来店の子どもさんには駄菓子やおもちやを選ばせてみたり、遊べるおもちや部屋などがあってもいい。
 女性には差込みメニューやDM、チラシ、店頭のショーアップでPR、提案してみては。
G 今はストレス社会。ホッとできる空間づくり、たとえば昔懐かしくて落ち着く「イ草の香り」や和食器など、「和」の持つ独特のぬくもりなど、何か取り入れて改革に挑戦、挽回を。
H 価格政策として、たとえば定番メニューは原価80パーセントで、他のメニューで粗利を。また、成功企業の良い点を研究し自社流に活かすとともに、事業コンセプトを明確に。


競合店に勝ち抜くには?

 「最近チェーンの焼肉店が近くにでき、打開策として安くしたりしたが、いっこうにお客様は戻らない」という話をよく聞きます。
 まず、気がついたことをランダムに示してみましょう。

@ 長年の営業に傲りはなかったか?
A 商品力に自信過剰で、そこに頼りすぎていなかったか?
B お客様をお客様と思わなくなっていた所があったのではないか?
C 時流・トレンドを気軽に観ていなかったか?
D 働く従業員をどう見ているか。活気はあるか?
E どれだけ計画運営しているか。その政策・方針は?
F 安くするならキムチなどコンビニで売っている値段と比較して高い、安いか?
G ライバルを意識するより、お客様のニーズが先である。ニーズを把握できているか?
H それぞれのコンセプト・戦略はもっていたのか?
I 以上のことから自店のポジションを知り、トップとしての力量からチェーン店の方向性をどうとらえているか?

      ※

 現在焼肉業界においても、店舗間での素材や料理の差はますますなくなってきています。
 そうした中でお客様に来ていただき、満足を与え、感動してもらい、リピーターとなっていただくには色々な要素がコーディネイトされていなければなりません。
 孫子の兵法に「敵を知り、己を知れば百戦あやふべからず」という言葉があります。
 まず敵よりも己、つまり自分の性格や財力、ブレーン(たとえば奥様やお店の幹部)の上昇志向はどうかなどを知ることが大切かと思われます。
 自店をかえりみて、そこからはじめてライバル店を分析し、値下げという即効策よりもチェーン店ではできない、あなただけのお店づくりを考えられてはいかがでしょうか?
 21世紀は個店の時代です。
 メニューなどすべて手書きでやるとか、困難を知らない若者には選択することの喜びを与える工夫とか、そして何よりも雇われ店長ではない、オーナーとしての情熱を表現してみてください。
「いらっしゃいませ」という言葉にも、トーンや抑揚、声の出し方には何百という言い方があります。
 あなたが商いに生き甲斐を感じ、お客様への役立ちに喜び、常にいいことをしているんだと思えば、その気持ちは必ず人に伝わるものです。そこに人は集うものなのです。
 しかし、あくまでチェーン店の持っているQSCのスタンダードをクリアしてからでないと、あなただけのカラーは輝きません。
 どこにもない、あなただけのカラーが店に輝き、そのカラーにお客様が楽しみだしたらしめたものです。
 そのカラーに、働く人の感動が加われば文句無し。頑張ってください。


ウェイティングに必要なもの

 まず、接客する側に「わざわざお待ちいただいている」という気持ちが必要です。
 どんなにおいしい料理でも、本当は待ってまで食べるということをお客様は望んではいません。それを良く理解し、行動しましょう。

@ 食事の前の時間を「前味」という。「前味、中味、後味」がしっかりしてこそ顧客の本当の満足に繋がる。
 待つ時間も「前味」と言えるのではないか。
A 「待っていただいて申し訳ない」という気持ちをあらわすことが大切。
 待つお客様には缶ビール、缶ジュース、ミネラルウォーターを、お待ちになれないお客様には割引券かお食事券を、お子様にはノベルティー(粗品)を差し上げる等ある。
 だが、一番大切なのはホスピタリティーマインドが感じられるかどうか。
B ウェイティングのお客様は、店員の動きを注意深く見ている。だから、 待ってもらうために短い時間を提示したり順番を間違えたりすることは、できるだけしないように気をつけよう。
C ウェイティングスペースに入りきらなければ、特にカップル等へはポケットベルを渡し、駐車場の車内でお待ちいただくのも一考。
D 腹を満たすだけでなく、語らいがあってこそ外食の存在価値がある。
 すなわち、待ち合い場所=イントロ(導入)にコミュニケーションのチャンスがあることを忘れずに、待っているお客様への感謝に満ちたあたたかさや、優しさを出せるグリーター(接客マン)を育てることが大変重要となる。
E お待ちのお客様が退屈なさらないように、音楽が聞けるヘッドホンを設けるとかモニターに野球放送を流すとか、ダーツを置いてミニゲームを行うとか、お客様の待つ環境を整備することも大切。
 禁煙コーナーも必要かもしれない。


コストダウンは「ムダ」「ムリ」「ムラ」から

 まずコストというものを売上全体から分析し、何に・どれだけ費用がかかっているのかを把握した上で、コストダウンというものを項目別に考えなければなりません。
 人件費だけ、原価だけで考えれば、必ずサービスやクオリティの低下につながります。
 項目別に割合(%)を算出した上で現状を把握し、その根拠を現場の作業からイメージする。これができなければ経営者として失格であり、逆にその数字をいかにコントロールできるかが経営者の手腕となります。
 そこで「ムダ」「ムリ」「ムラ」をいかに排していくかを考える必要があります。とくにムダ=ロスを少なくする努力がコストダウンへの早道です。主なものは食材のロス、労働時間のロス、 諸経費のロス、と思われます。
 次に「売上予測、出品予測にもとづいた仕入れをしているのか?」「繁閑比に基づいた人員配置をしているか?」「人時売上高の推移はどうなっているのか?」「光熱費のムダはないか?」等々、自店の数字に当てはめて考える必要があります。
 完全公開主義(ディスクロージャー)で人件費を流動化させるのも一案です。業績に応じた報酬、成果配分制度の導入がやる気を起こし、コストに変化を与えます。
 一番注意すべき事は「ムダ」「ムリ」「ムラ」は「すべて人が作り出す」という点です。
 企業経営の視点のみで効率化、スリム化のコストダウンを進めても、人の意識は確実に低下していきます。付加価値競争の時代となった今、新しい価値を生み出す能力を持った人材の養成と、企業経営よりも商品経営を優先させる理念の浸透と雰囲気づくりが、まずは必要ではないでしょうか。
 また、何のためのコストダウンかと考えた時に、その答えが利益追求では正解とは言えません。あくまでより良いものを提供するための手段であり、それを追及することによって最終的に利益に結びつくのです。
「利益を生み出すのはお客様」という事を、忘れてはいけません。


オフィス街の焼肉店

  オフィス街の焼肉店の場合、次のポイントが考えられます。

@ サラリーマンの厳しい消費意識や低価格のさまざまな業態の台頭もあり、採算性はかなりシビアに。
 自慢すべきものがなければ出店すべきではない。
A 大都会において賃料2・5万円/坪当り以上の場所であれば、たしかに人は集まるだろうが、家主に利益貢献するために商売をしているようなものではないか?
B ランチタイムとディナータイムの売上構成比を考え、短時間で提供でき、複雑でないオペレーションづくりを。
C 日・祝日の売上は期待できないので、平日に要員計画のシフトをしっかり組み、人員的な機会損失を出来るだけ起こさないように。
D お客様は無機質材の仕事場に一日中勤務しての帰りなので、暖かい有機質材を多用するなど、 レトロ感覚で包むというコンセプトが必要。たとえばポケットマネーで気軽に立ち寄れるような赤提灯のぶら下がった裏町風など。
E ビジネス街といえども、女性を意識した「色々な味が少しずつ楽しめ、手間を惜しまない」専門店としての姿勢がなければ生き残れない。
F メイン料理をサイドメニュー化し、追加して食べられる小皿等で、その店ならではの創造性や選べる楽しさを。独自の特長を絞ってアピールしなければ、デリバリーや弁当屋に負けてしまう。
G 客単価は昼700円、夜1800?2500円を目安とし、週替りコースや黒板を利用した「本日のオススメ」を提供するなど、出来るだけ料理のメニューを入れ替えて、飽きさせない工夫を。
H 平日350円の昼食を摂るニュージェネレーションのライフスタイルを考慮し、食前に無料の漬物、食後に無料のデザート等で来店の動機づけに。

  以上をご参考になさってください。

新田良基(にった・よしき) 
1935年生まれ。58年、大阪工業大学土木科中退。60年、家業の『平和園』に従事。65年、東京・六本木『東京園』に勤務。70年、『有限会社平和園』を設立。92年、『株式会社平和園』(本社・帯広市)を設立し代表取締役社長に就任。全国焼肉協会理事。




J.Y(全国焼肉協会=ALLJAPAN"YAKINIKU"ASSOCIATION)は、焼肉業界の社会的地位の向上を目指して、平成4年10月に設立された団体です。個々のお店の繁栄に貢献するためのさまざまな活動や次世代の焼肉業界を支える人材の育成など、業界内の積極的な交流と連携によって、焼肉業界の地位向上を目指す団体です。J.Yでは、平成10年5月28日付けにて農林水産大臣の認可を取得し、事業協同組合となりました。

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